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小学校からの帰り道。俺は一人だ。
友達がいない訳じゃない。むしろ多い方だ。
俺が一人で帰る理由は、帰る場所が自分の家じゃないから。そしてそこは幼なじみ兼同級生の女の子の家でもあるから。
いちいち冷やかされるのがめんどくさい。
喫茶イチムラ
ここがそう。俺の帰る場所。
カランカラ~ン
「ただいま」
客はゼロみたいだ。いつものことだけど。
「音弥(おとや)くん、おかえり」
「ただいま、アキ姉ちゃん」
出迎えてくれたの高校生のアキ姉ちゃんだった。
「あれ?学校は?」
「テスト週間だから昼でおしまい。だから私が店番」
「働くの好きだよね、アキ姉ちゃんって」
「こんなガラガラじゃ働く内に入んないわよ」
アキ姉ちゃんはそう言って笑った。
「おじさんは?」
「家にいるわよ。音弥くんのこと待ってたから、呼んでくるわね」
お父さーんと呼びながらアキ姉ちゃんは店の裏の家におじさんを呼びにいった。
おじさんが俺を待っている理由。それはキャッチボール。
俺とのキャッチボールがおじさんの日課なのだ。
別に俺は野球をやっている訳じゃないし、むしろ嫌いだけど、幼い頃からやっているので俺にとっても日課になってしまっただけだ。
そう、それだけの理由だ。
「おう、おかえり」
すぐにおじさんは出てきた。
昔、筋肉隆々だったせいか、ゴツい身体。
野球やってるって言ったら間違いなくポジションはキャッチャーでしょ?って言われるだろう。
実際高校時代はキャッチャーだったし。
「よし、やるか」
おじさんがグローブを投げてよこした。
さぁ、日課だ、日課。
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