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だいぶ日が暮れてきた。そろそろ切り上げようと思っていると、怒鳴り声が飛んできた。
「いつまでやってんのよ!!」
そして声の主はツカツカと俺の方へ迫ってきた。
「毎度のことだけど、お父さんを誘惑しないでくれる?うちは商売してんの!営業妨害で訴えるわよ!?」
「まあまあ奏(かなで)、そんな怒鳴らんでも…」
「お父さんも何遊んでんのよ!今お店に変なお客さん来て、アキ姉ちゃん大変なんだから!」
「わかったわかった、すぐ行くから」
おじさんは店へ駆けていった。
「ちょっと音弥、あんた今日掃除当番だったでしょ?サボってなにしてるのかと思ったら、やっぱりキャッチボール。
そんなにやりたかったら野球チーム入ればいいじゃない。
仲良しの友川くんもやってるんでしょ?」
「俺は野球をやりたい訳じゃない、キャッチボールはただの日課。」
「なにその言い方、まるでお父さんの相手をしてあげてるみたいじゃない」
「間違ってはないだろ?」
ブチッ
あ、キレた。
「あーあーそうですか!!それはそれはご苦労様でした。では明日からその日課は廃止といたしますので!!いままでお疲れ様でした!!」
そうまくし立てて、俺の幼なじみ兼同級生は去っていった。
市村奏という女は、市村家の居候的存在の俺を昔から気に入っていない。
特に機嫌が悪くなるのが、俺が野球を否定するような台詞を言った時。
甲子園優勝捕手の父を否定された気分にでもなるのだろうか。
それを学習した俺はなるべくヘタをこかないように、奏との接触は必要最低限に抑えている。
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