20年後 夕方

5/6
前へ
/12ページ
次へ
カランカラン 俺は店に戻った。 さっき奏が言っていた変な客はいないようだ。 カウンターにおじさんがいるだけだ。 「よう、奏に怒られてたのか?」 「あぁ、明日からキャッチボール禁止された」 「あっはっは、あいかわらずキツイね~奏」 「なんか言った?」 おじさんの後ろに奏が立っていた、奏と手をつないで妹の鈴菜(すずな)もいた。 「いやなんでも」 おじさん、汗すごいよ。 「あー、音弥だー」 鈴菜が飛びついてきた。 「こら、スズ、馬鹿が移るよ、離れな」 奏さん、めちゃめちゃ機嫌悪い。小学生がしていい目つきじゃないと思う。 なぜこいつが学校の男子から人気があるのか、俺には謎だ。 「奏、機嫌なおして、お客さんいないからなんか飲むか?」 「スズはグレープジュースがいい!」 「私、オレンジジュース」 「俺コーヒー」 「また?なんでそんな苦い汁が好きなの?そんな黒いものばっかり飲んでるから、腹も黒くなるんじゃない?」 「なんだと?全国のコーヒー愛好家にあやまれコノヤロー。 別に小学生が飲んだって悪くないだろ?」 「あんたに飲まれるコーヒーが可哀相よ」 「おまえさっきコーヒーのこと馬鹿にしてたよな?なんでいきなり味方なってんだよ」 「このっ…人の揚げ足ばっかりとって、バーカ!」 この口喧嘩、俺の勝ちだな。 「なに勝手に勝ち誇ってんのよ!私はまだ…」 「ふたりともおもしろ~い」 そう言ってスズが笑っていた。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加