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トッ トッ コロコロ…
深い海の色の球が、冷たい大理石の床を転がる。
――これは、夢だ。
球は漆黒の靴の方へ。コツ、と爪先に当たり――
グシャッ
その脚の持ち主によって粉々に踏み砕かれた。
――当主。
夢のなかの自分の視線は、脚を上へ辿る。金の長い髪に、黒い翼。チェス駒を弄ぶ手は黒い。
『あ゛?何見てんだクズ』
『ひでえな!自分の子だろうがよ』
チェス盤が置かれたオーク製の机を挟み遊戯に興じていた男二人。球を砕いた金髪の男は欝陶しそうに自分を見下ろし、紅髪の男は、本心には露も思っていないだろう咎める台詞を馬鹿笑いしながら口にする。
『知るか!ただの予備駒だ。チェックメイト』
『ぶはは!テメェを殺す予備、ってか?待った』
『待った無し。ってかコレ、いつから居た?』
『最初から居たよ!興味無さ過ぎて笑えるし!』
コンコン、とノックの音がする。入れ、と当主が言った。
『当主。キエリアゼ卿が。供物を捧げたい、と。十数人です』
入って来たのはモノ。俺をちらっと見たが、気にかけないよう。
『出た第一候補!』
『これはこれは、ディアスレイアス公爵。邪魔をして申し訳ない』
赤髪の男がおちゃらけて言い、モノが丁寧に返す。
『女は』
『五人。内、二人は子供』
『宜しい』
当主が退室する。赤髪の男も追って行った。
残されたモノが俺を見る。その眼が、ギラついて…何かを…言って……手を、俺に……!!
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