ヴェルドザウマ

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「……っ!!」 跳び起きた。撃たれた腹と左肩が痛む。じっとりと汗をかいていた。 同じ夢を何度も見て眠れない。多分、幼い頃の記憶。当主…父の冷たい眼差しが、モノ…兄の深い眼差しが、砕かれた球と重なって…。 一日の出来事を思い起こす。 魔法陣をものにしようと、河原へ行って。異変を感じて屋敷へ戻り。撃たれ。気を失い。目が覚めたらトリクスがいて。俺の母親について語り出したかと思ったら核心でわかんないとか言い出し(だったら最初から言うな)。アマルハマル襲撃の命が出されていて。実は人間同士の争いで。ジルに殺されかけて。真っ赤な広場が芳しくて、自分が不気味で。気付いたら変な陣使ってて。赤い色が消えて。モノがジルとトリクスを引きずってやって来て(モノ、何処にいたんだろう)。黒幕っぽい男が出て来て。なんか凄くムカついたから殴った。 青白装束は、アマルの人達が王都へ送りに行った。シェルターの子ども達は無事で、でも何人か火傷してたな。家を失った人達は無事だった家へ身を寄せている。復興の手助けを町長が願い出た時、モノは秘術のデータと引き換えに了承した。当主の許可を聞かずに。 そもそも当主の命は本物だったはず。俺達はいつの間にか、兄弟全員で父を欺く事になっている。 ……待てよ。モノ、当主を屠る気なんだよな。母親のことを知ってんの、当主だけだよな。今しか、聞けないな。一応気になるし。どうせ眠れないし。 俺は寝具から抜け出す。裸足のまま廊下へ出た。ここは二階。当主の部屋は四階。階段を昇る。 無意味に凝った踊り場を二つ通り、“そこ”に着いた。ぶっちゃけ、当主が苦手だ。もうずっと顔も見ていない。 「………!!!」 ゾワ、と身の毛がよだった。身体の中が引っ掻き回されるような不快感。思わず壁に手をつき心身を支える。 ガチャ 当主の部屋のドアが開いた。
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