“愛”という名の奇跡

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「美奈都、日射し暑くないか?」 「大丈夫だよ、もぅ英斗は心配しすぎなんだから」 橘 美奈都(タチバナ ミナト)と 柏木 英斗(カシワギ エイト)は軽い会話を織り混ぜながら、英斗の足と彼女が座る車椅子を歩ませる。 ギラギラと太陽が照らす中、麦わら帽子の隙間から、彼女のはにかんだ顔が伺えた。 「今日は何処に行きたい?久しぶりに外出の許可を貰えたんだし、いろんなところを旅してみるか?」 うーん、と頭を悩ませる美奈都。色白い手が、車椅子を押す俺の手に触れる。 力が無く、その冷たい手のひらに俺の身体は寂しさを感じた。 「……確かこの先に海があったよね?」 車通りが少なく、高い建物がないこの地域は、少しでも高い位置に登ると、すぐ海が見えるのだ。 美奈都がいる部屋からなら、それを確認することなど容易であるだろうと思う。 美奈都が俺に顔を向けて笑ってくれた。 「英斗、海行こっ!」
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