0人が本棚に入れています
本棚に追加
Ω
「…というわけだ~!皆精一杯行うように~いいか?」
ハイ、と間の抜けた声が静かな教室に響いた。
(あれ?俺何も聞いてないんだが…。まぁ後で修仁にでも聞くか)
「話を聞き逃したヤツはぁ~他の人に聞けよ~。まぁ、そんなヤツはいないけどなぁ~。なぁ、狩野」
わぁ、鋭い。先生鋭い。ついでに皆の視線が痛い…。
――キーンコーンカーンコーン……。
思わず、古ッ!?と叫んでしまうくらい低いチャイムが教室を重く包んだ。
「よし、じゃあ終わります。起立!気をつけ!着席!!」
ズコッ…。
まるで古木新喜劇かの様に、クラス全員がズッコケた。
わかった。わかったから、職員室へ向かう途中、振り向き様にどや顔を決めるのはやめてくれ。坂田先生…。
「あ、あと次は実戦だから~教室から五歩以上は出るなよ~」
四歩程度はいいんかい…。
しまった。昼休み中ほとんど半寝半死だったからトイレへ行きたいな…。四歩ならば、大股で飛んで行けば大丈夫だな…うん。きっと修仁も同じ事を考えているだろう…。
「トイレ行きてぇな…」
丈の思惑通り、修仁は教室から一瞬にして消えた。
(よし。とりあえず勢いをつければ大丈夫…って、赤服白ひげの仙人っぽい人が言ってたような…)
丈は窓から入口まで走った。
誰も見てないな。皆が話に夢中で助かった…。
(いける。いけるぞ!このまま廊下で三段ジャンプを決めれば…!……前に修仁が………なっ!?全力疾走だと!?予想外だ……だが負けない!!)
「うぉぉぉォオオお!!」
「はぁぁぁァアアあ!!」
お互い、全力で向かった。そして、
「…え?」
トイレまでもう少しの所に、女教師がこちらを見て驚いていた。だがそれ以前に、
「…あれ?どうしたお前ら?……プッ…」
笑われたぁー!!ものすごく嫌な顔で!!ものすごくウザイ顔で!!
…何でココに直也がいるんだよぉォオ!
「……」
やめて…モウヤメテ…そんな哀しい奴を見る様な目で俺達を見ないでくれ!
「………」
「………」
その後、俺達は五分程立てなかった。
「え!?え!?どうしたんですか!?え!?」
ちなみに、直也から聞いた話では、この女教師は直也のいるクラス、天組の担任らしい。
最初のコメントを投稿しよう!