第二刻《創戦》

5/9
前へ
/30ページ
次へ
   Ω 「…というわけだ~!皆精一杯行うように~いいか?」  ハイ、と間の抜けた声が静かな教室に響いた。 (あれ?俺何も聞いてないんだが…。まぁ後で修仁にでも聞くか) 「話を聞き逃したヤツはぁ~他の人に聞けよ~。まぁ、そんなヤツはいないけどなぁ~。なぁ、狩野」  わぁ、鋭い。先生鋭い。ついでに皆の視線が痛い…。 ――キーンコーンカーンコーン……。  思わず、古ッ!?と叫んでしまうくらい低いチャイムが教室を重く包んだ。 「よし、じゃあ終わります。起立!気をつけ!着席!!」  ズコッ…。  まるで古木新喜劇かの様に、クラス全員がズッコケた。  わかった。わかったから、職員室へ向かう途中、振り向き様にどや顔を決めるのはやめてくれ。坂田先生…。 「あ、あと次は実戦だから~教室から五歩以上は出るなよ~」  四歩程度はいいんかい…。  しまった。昼休み中ほとんど半寝半死だったからトイレへ行きたいな…。四歩ならば、大股で飛んで行けば大丈夫だな…うん。きっと修仁も同じ事を考えているだろう…。 「トイレ行きてぇな…」  丈の思惑通り、修仁は教室から一瞬にして消えた。 (よし。とりあえず勢いをつければ大丈夫…って、赤服白ひげの仙人っぽい人が言ってたような…)  丈は窓から入口まで走った。  誰も見てないな。皆が話に夢中で助かった…。 (いける。いけるぞ!このまま廊下で三段ジャンプを決めれば…!……前に修仁が………なっ!?全力疾走だと!?予想外だ……だが負けない!!) 「うぉぉぉォオオお!!」 「はぁぁぁァアアあ!!」  お互い、全力で向かった。そして、 「…え?」  トイレまでもう少しの所に、女教師がこちらを見て驚いていた。だがそれ以前に、 「…あれ?どうしたお前ら?……プッ…」  笑われたぁー!!ものすごく嫌な顔で!!ものすごくウザイ顔で!!  …何でココに直也がいるんだよぉォオ! 「……」  やめて…モウヤメテ…そんな哀しい奴を見る様な目で俺達を見ないでくれ! 「………」 「………」  その後、俺達は五分程立てなかった。 「え!?え!?どうしたんですか!?え!?」  ちなみに、直也から聞いた話では、この女教師は直也のいるクラス、天組の担任らしい。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加