【さよなら――棄てられた世界は何処に――】

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◆◇◆◇◆◇◆◇ 神様が一品料理を出せば、手品師は飲むように喉に押し込んだ。 料理がそろうまでとか、神様が来るまでとか、魔王の分を残しておこうとか、手品師は微塵も感じさせなかった。 始めは呆れていた神様だったが、見事な食べっぷりに気を良くしたのか次々に料理を運んでくる。しかもなかなかレパートリーに飛んでいた。匂いもいい。この腕なら、すぐにお嫁に行けるだろう。 「まおう」 「ん?」 「ッ……いる?」 「いいから食え」 食べかけの皿を差し出すが、魔王は首を横に振った。食べたい気持ちはあったが、他人の食べかけは食いたくない。 「大丈夫ですよ、食材はまだまだ残ってます。魔王さんにだす分はありますから、安心してください」 緊張感が解けたあたりから、神様は丁寧語を話すようになっていた。魔王はなにも感じないが、手品師はどうも気になるらしい。タメ口でいいよ―、と言ったのだが、神様はこの話し方が一番楽だと言って直さなかった。 「料理上手いんだね、神様」 「そんなことないですよ。これくらい周りの友達はみんな出来ました」 「そうなんだ。でも美味しいよ」 「ありがとうございます」 ほんとに嬉しそうに神様が笑う。それを見て、手品師も笑顔になった。すっかり生気の戻ったその顔を見て、魔王だけが面白くなさそうに舌打ちを付く。 あまりに小さい音に二人は気づかない。 「ご飯のおかわり、ありますよ」 神様の優しい言葉を手品師は素直に受け取る。結局、手品師一人で炊飯器一つ空にした。  
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