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おい、嘘だろ?
と問いかけるように、夕日を顧(かえり)みた。
問う、というよりは救いを求めると言った方が適切か。
だが見つめた太陽は俺の問いに答えることはなく、やがて俺への興味を無くしたかのようにすっと一日の終わりを告げて沈んで行った。
さっきまではこれでもかと言うほど坂の上に居座っていたのに、世界が一変してからはやけに潔いじゃねぇかこの野郎。
やがて完全に太陽の光が届かなくなり、辺りに夜の戸張が降りる。
唯一の熱源を失った大地は、大気の寒暖差により冷たい空気の流れを生み出した。
「ちょっと……寒いな」
言葉に意味は無い。
だが、何か言わずにはいられなかった。
俺はまだ太陽が沈んだ場所を眺めていた。
「つ、つまり……どういうことだってばよ」
何これ?
どゆこと?
さっきまで俺町にいたよね?
なんでいきなり草原にいるわけ?
なにこれこわい。
誰に聞いているのだろうか。
この独り言もぼっちの俺にとっては別段珍しいことではなかったが、今度ばかりは誰もが同じリアクションを見せるだろうな。
ともかく俺は何も行動することが出来ず、月が真上に昇るまでその場でおろおろしていた。
この上なく混乱し狼狽(うろた)えていた俺だったが、いつの間にか草原の中の適当な空間に落ち着き、眠ってしまっていた。
緊張感が有るのか無いのか。
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