とある孤立者(ぼっち)の人生迷走(ストレイング)

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おそらく翌日の朝。 肌寒さに体を震わせ、摩擦で体を暖めようと手で体を擦った。 「ん……?」 ああ、何かおかしいと思ったら、俺草の上で寝てたのか。 ひんやりとした感覚が全身に伝わる。 草でできた俺特製の寝床は、冷たさを除けば寝心地自体は中々のものだった。 ちなみに製作時間=睡眠時間だ。 またそれと同時に、昨日起きた出来事を思い出した。 俺を何かから逃がすまいと時間を止めた世界。 一瞬にして全てが変わってしまった世界。 あまりにも俺を当惑させる世界。 もうやだこの世界。 しかし、草の上で寝るのも意外と悪くないもんだな。 体を動かすと、ある違和感に気づく。 「背中が……暖かい……?」 確かに暖かい。そして人間や動物特有の、いわゆる肉の柔らかさを感じる。 そうだな、これはきっと生き物の温もりだ。 いやあ暖かいなぁ。 でっかい体で、俺を包むみたいにくっついているんだ。 これなら早朝の寒さもしのげるってもんだ。 一家に一台あったらきっと便利だな、うん。 …………ああ、分かったよ。 苦し紛れの現実逃避はやめて、素直に後ろを見ますよ。 俺はずっと固く瞑っていた瞼を静かに開き、このふわふわの体毛の持ち主を仰ぎ見た。
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