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俺はゆっくりと立ち上がり、獣の腹から体を離した。
警戒を絶やさずに数歩下がり、そのまま五メートルぐらいまで後ずさった。
んっんー……どうすんべぇかな。
多分、攻撃されても三発ぐらいまでなら大丈夫だ。
俺には避ける自信があった。
獣もついに起き上がり、唸りながら俺を見下ろしている。
宝石のような青い瞳が、俺を捕らえて離さない。
首回りに生えた毛は、たてがみ状になっており、朝の日差しを反射して緋色に煌めくそれは、リアルな獅子のそれよりもさらに覇者の風格を漂わせる。
それだけではなく、目の斜め上方には鱗状の甲殻から出きた角まで生えていた。
二本一対の鬼のような青く逞しい角は、天を突かんばかりに鋭く、厳かだ。
美しい。かっこいい。恐ろしい。
優美。屈強。威圧的。
この獣一体が、そんなさまざまな性質を内包している。
てか……こいつ襲ってこねぇな? 何してんだ?
獣は何もせずじっと俺を見て唸っているだけ。
タイミングでも計っているのか?
うーん……。
俺も思慮に耽り唸ってみるが、何も起こらないし変わらない。
とうとう獣は座ってしまい、最後には伏せていた。
その一連の流れは、犬がお座りから伏せへと体勢を変更するようだった。
「おぉ……!?」
こ、こいつ……!?
よく見ると尻尾ふってやがる!!
よくわからないけど、俺はこいつに気に入られているようだ。
なるほどな……。
フッ、俺が動物大好きと見抜くとは、なかなか見る目があるじゃないか。
いいぜ……来いよ。
この俺がたっぷりと可愛がってやるぜ!!
「もふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふもふ!!」
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