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「名前すら知られてないとはなぁ……」
ぽつりと独りで呟く帰り道。今まで何度も同じような事があったが、今日のあれは会心の一撃だな。
二つの理由のどちらかで死んでしまうかと思った。
片方はショック死。
残りの一方はお察しください。
おお夕希よ、しんでしまうとはなさけない。
目を上げて正面をみれば、赤く揺らめく太陽が今にも地に沈もうとしていた。
昼と夜の狭間、黄昏時。独特の哀愁を感じさせる静けさに、暖かいとも涼しいとも取れる僅かな湿度を含んだ風が薫る。
聞こえるのは、俺の足音と風の音だけ。
この道は、長く緩やかな一本道の上り坂で、左右が多くの連立する住宅に挟まれている。
その住宅街も今は鮮やかな赤と黒の陰影を映していて、一枚の絵にしてみたらなかなか味があるのではないだろうか。
また、今の時期はこの道の先のちょうど真ん中に太陽が落ちる。
神々しい赤い光に包まれたこの道の先は、どこまでも果てしなく続いてるように思えた。
このままずっと歩いていたら、どこか知らない所まで続いているみたいに。
そんな詩人気取りの景色の説明なんかいいから、今日帰ったら何しようか考えるかな。
とりあえず一狩り行くか、ソロで。それとも俺の嫁が生きるオンラインな世界を旅するか、フレンドなしで。あるいは決闘者(デュエリスト)として新たなデッキの構築でもしようか。闘う相手なんか居ないけどね!
ハハッwwワロスww
ワロス……。
いやいや、ネガティブな考えはもうやめだ。楽しい事を考えなければ。
もし彼女でも出来たらどんなデートコースに行くか、とか?
「夕日よりも君の方がずっと綺麗だよ……」とか言ってみたい。
あ、うん、ごめん。キモいね。自分でもキモいと思った。
ちなみに、年齢=彼女居ない歴だぜ。
友達すら出来なかったんだから、彼女なんかあり得ない。
だからと言って、これから先死ぬまで彼女が出来ないとは限らないだろ!?
……限らない……だろ?
そうだと言ってよバーニィ……。
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