神様！仏様！きつね様！ 其之壱

白狐の血

まだ父の雪雄は帰ってこない。

ゆき乃は、光流に正体を明かされたことを父の雪雄に黙っていようと思った。

(今回の花川戸の件が終わるまでのことだもの。いいよね、お母さん？)

すでに亡くなっているゆき乃の母は稲荷神使である白狐だった。

そして、稲荷神使となる前の母は、強力な狐の妖怪、妖狐であったという。

そう父に聞いたのは、たった数年前で、そんな現実離れした話を素直に飲み込む事は出来ない。

透き通るような色白の肌と墨のような艶やかな黒髪と鈴のような優しい声が、かすかに母の記憶としてゆき乃の中に残っている。

(お母さん、私どうなっちゃうの？)

頭がグルグルするような感覚を振り払おうと、ゆき乃は両手で自分の頬をパンと叩いた。