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――――目が覚めると、颯は自室のベッドの中にいた
どうやって戻ってきたのか………そもそもあの出来事は夢だったのではないか
そんな考えが脳内を巡り、答など出る筈もなく、一度深いため息を吐き、重い身体を持ち上げ、リビングに向かった
「あら?いつの間に帰ってたの?」
扉を開けると30代後半に見えない母親が首を傾げていた
「……あ――、結構前、疲れてたからすぐ寝ちゃったんだ」
視線を上げ、渇いた笑みを浮かべる
「そう?……夕飯は?」
何かを感じ取ったのか、いつもより柔らかく、労るように微笑んでくれる母
「いらない…………………………母さん」
「なに?」
「俺に…――――――――っ…………何でもない」
目を反らし、そう言うと母さんは「そう……」と少し悲しげに微笑んだ
「母さん………ありがとう」そして…………………ごめん
颯は、どんなに否定したくても、あの電車で起きた事は夢なんかではないと、核心していた
俺が死んだら…………
そこまで考えて、颯はその考えを打ち消した
絶対、生きてやる
「おやすみなさい、母さん」
「………おやすみ」
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