遠い、隣

10/16
前へ
/23ページ
次へ
「そういやカケル、美純のヤツ彼氏欲しいらしいよ?」 「ちょっ、バカ!!」 「え、まじで?付き合う?俺と」 相変わらずの軽いノリで、なんでもないことみたいにニコッと笑う。 褐色の肌とやたら白くて歯並びのいい口元。笑うと目尻に皺が寄って、数歳は若く見える。 「かるぅ…」 思わず口からこぼれた言葉を聞いて、京香が吹き出した。 ……彼氏か。 なんとなく恋愛って楽しいイメージがなかった。 手繋いだり、キスしたり。 そんなことのどこに“ハマる”要素があるのか、17歳になった今も……よくわからない。 数年前に付き合っていた人とも、数ヶ月もしないで別れてしまった。 だって、夢中になる感覚も。 好きだって気持ちもわからない。 ただ、制約ばかりが増えて、窮屈で、楽しいってのとは随分違う。 それ以来、彼氏は作らなかった。 京香いわく、本当の恋を知らないから。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加