遠い、隣

5/16
前へ
/23ページ
次へ
ローファーをつっかけて玄関を出る。 電車が発車するまであと10分。 ここから駅まで歩いて15分。 走れば間に合うか間に合わないか。 それでも走るしかないっ…! 意を決して駆け出す。 カシャン。 隣の家の門扉が開き、自転車をひきながら遼が出てきた。 それ横目に、ダッシュを続ける。 「…急いでるの?」 不意に、背中に声が掛かった。 「後ろ、乗る?」 正直、藁にもすがりたい気持ちで振り返った。 黒い学ランに、黒い頭。 切れ長の涼しげな目元が、昨日ぶりにぶつかった。
/23ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加