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熱い頬を押さえながら電車に乗り込んで、気が付いたら目的の駅に着いていて、ふらふらしながら学校まで歩く。
ヤバイ。
胸に落とされた爆弾。
私たちからすれば化粧しないほうがかわいいだなんて、酷いけなし言葉だ。
なのに。
久し振りに会話した幼馴染みのけなし言葉に……ときめいてしまった。
なんたる誤作動…………。
しばらく、恋愛していないからか?
「……やっぱ彼氏作ろうかな」
「何美純、彼氏欲しいの」
後ろから耳元で囁かれた。
ばっと振り向いて耳を押さえる。
「おっす」
アッシュブラウンの髪をくりんくりんに巻いて、前髪をピンで止めた“いかにもギャル”って容姿の、京香(きょうか)が片手を上げて立っていた。
「へんな挨拶やめてよね……朝から」
「やー、美純がでっけぇ一人言呟いてたから」
「え、一人言いってた?マジで?」
「自覚ナシはヤバイっしょ。つーか………美純、顔どしたの?」
言われてはっとする。
今日はナチュラルもいいとこな手抜きメイクだった。
「すっげーそれ、コダック喜びそうなんですけど」
コダックというのは担任で生徒指導の古田(ふるた)のことである。なかなか今時いないような熱血漢で、まぁ…他の先生方からもかばってくれたりする、いい教師だ。少なくともクラスのみんなはコダックが好きだと思う。
「寝坊……、一限出席ギリだしヤバイ焦ったつーの」
二人ダベりながら内履きに変え、かかとのつぶれたローファーを下駄箱に突っ込む。これまた内履きもサンダル履き。
……これが、私達。
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