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-朝-
麗らかな春の暖かい陽射しが、空いた窓から爽やかな風と共に差し込む。
そんな陽の光によって──
「…たいが、朝」
ではなく、弥優の声によって、俺の1日は始まる。
幼なじみである彼女が、一人暮らしの俺を起こしに来てくれるのだ。
鍵?この為に合鍵を手渡し済みだ。
「ん~…あと五分ー」
しかし俺は、朝の貴重な時間をより長く寝て過ごしたいという、典型的なグータラ少年。そう漏らすと、再び眠りに落ちようとする。
が、弥優がこうやって俺を起こしてくれるのも、始まって既に一年半。
つまりは、
「たいが…今、8時25分」
「うっそマジで!?遅刻じゃん!」
「うん、嘘」
俺の起こし方も、全て心得ているという訳だ。
見事弥優の嘘に騙され、寝癖を付けたまま呆然と立ち尽くす俺に、
「…早く降りて来て。ご飯、作った」
相変わらずの、余り変化の無い表情と淡々とした口調でそう言うと、俺を残し下に降りて行ってしまう弥優。
だが、弥優のメシが食えると思うと、寝る時間を損した気分にはならない、不思議な俺だった。
これが、俺と弥優の朝である。
ちょ、そこ。リア充爆発しろとか言うな!
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