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-授業中-
それは、その日の三限目。国語の授業でのこと。
担当の先生の指示で、二人一組で古文を朗読する、という授業になったのだが。
「全然分からん」
勿論俺は、何も分からない。日本語らしき文字が羅列されているが…何て読むんだこれ?
「やうやう」って…何かの動物の鳴き声か?
そんな状態の俺に対し、弥優はというと、
「…春は曙。ようよう白くなりゆく山ぎわ、すこしあかりて、紫だちたる雲の細くたなびきたる」
すらすらと教科書の文を読み進めて行く。
「流石だな、弥優」
「…普通」
感嘆する俺に対し、いつも通りの澄ました口調でそう言うと、
「何処が分からない…?」
俺の隣に座り、横から覗き込む弥優。
そして、俺に細かく教えてくれたのだったが…
「──火桶の火も、白き灰がちになりてわろし!」
弥優の手も借りて、何とか最後まで読み終えた俺。
しかし事件は、この時に起こった。
「たいが…ちゃんと勉強、する。頭、わろし」
「…なんて?」
聞き間違いだったのか、弥優に訊ね返す俺。
一瞬の静寂。そして、
「…間違えた。頭、悪い」
表情・口調そのままに、さらっと訂正する弥優。
どうやら、先程までの古文と日時会話がごちゃごちゃになったらしい。
我らがクーデレお姫様は、ちょっぴりおっちょこちょいだった。
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