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俺は彼女の声無き声を感じたまま、ファンタの缶を見つめていた。
彼女の弱さがひしひしと伝わってくる。
流れ込んできそう…。
受け止めきれそうもない感情がだだ漏れになって俺を呑み込んでいく…。
俺でさえまだ納得できない現実を倍の力で突き付けられているように思えた。
ふと気付いた。
ファンタの缶が再び転がりだしていることに。
風はない。
しまった、忘れていた。
ここは危ない心霊スポット。
何かが起こる予感がして、俺は彼女を抱えたまま立ち上がろうとした。
そのとき、一瞬の隙をつかれて俺は見えてしまった。
やっぱり、俺には霊感ってヤツがあるらしい。
転がるファンタの延長線上に女の子が見えてしまった。
街灯の付いていない暗い電信柱の影に重なるように、ぼやっと立っていた。
赤い服に赤いスカート。
髪型はおかっぱってヤツかな。
異常な程、肌が白っぽく見えた。
妙な鳥肌がたって、肩が重くなったように感じた。
俺の脳の中身がコイツは幽霊だと断定していた。
噂には聞いていたが、本当に見えてしまうとは…。
7、8歳くらいの小さな女の子だった。
やべぇーよ、大ピンチ。
尋常じゃない雰囲気が俺たち二人を包んでいることに気付いて、俺の体は不思議と動かなくなってしまっていた。
噂では、女の子が笑ったら笑いかけられた者は死ぬってヤツだ。
俺は覚悟を決めて女の子の顔を見つめていた。
白っぽいこと以外は、ぼやけていて、よくわからなかった。
急に固まった俺に、ミキちゃんの腕が緩まった。
「どうしたの?」
涙の残る表情のまま俺の顔を覗き込もうとした。
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