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俺は声も出せない状態だったから、彼女が幽霊の方を振り向かないように祈っていた。
女の子の霊はデパートではぐれた迷子のように挙動不審をあらわにしてキョロキョロと辺りを見まわしていた。
確実に、知っている誰かを探していた。
きっと、まだ死んでいることに気付いてないんだと俺は察した。
幽霊になってまでも現実と向き合うのは難しいことなのだろうか?
君はもう死んでいるんだ。
全部終わってるんだ。
俺はいいけど、ミキちゃんの目には映らないでくれよ。
と、心の中で唱えていた。
ついさっきまでのドキドキがウソのように、俺の頭が冷めていく。
目を開いたまま、微動打にしない俺の視線の先を気にして、ミキちゃんは幽霊の方を振り向いた。
待った!見ちゃダメだ!
俺は叫びたかったが口が動かない。
ミキちゃんは幽霊の方を見てビクッと動き、怯えながらつぶやいた。
「…え?…やだ。」
どうやら、サキちゃんの目にも映ってしまったらしい。
俺は祈り続けた。
彼女の右手が俺の左ひじを強く掴んだ。
次の瞬間、彼女が凄まじい声で悲鳴をあげた。
「ギャーーー!!」
トンネルの中で激しくこだまして、幽霊もビビって逃げ出すんじゃないかってくらいのとんでもない声だった。
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