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早く幽霊の視界から消えたくて、俺は濃い汗を流しながらトンネルを出てすぐに線路沿いの道を右に曲がった。
こっちに行けばローソンの看板が見えるはずだ。
青い光を求めて、そのまま真っ直ぐに走り続けた。
必死の形相で、命からがら。
光との対角線上にできる自分の影が、背後から追いかけてくる幽霊のように思えてきて怖かった。
解けない呪文にかけられた気がした。
このままじゃ不安で、トンネルが見えなくなる所まで来ると、トンネルの方を振り向いてみた。
見たくないような、見たいような、複雑な心境で目を細めながらだんだんとピントを合わせていった。
大丈夫だ。
誰もいない。
トンネルから俺の足下まで続く道に女の子の霊はいないようだった。
何度も確認した。
俺はほっとして思わず笑みを浮かべながら、肩を掴んで支えていた彼女の顔を見た。
彼女は青ざめた表情で目をかっと開きながらアスファルトを見つめていた。
え?
嫌な予感がして、俺は息も上がったまま口を開いた。
「…大丈夫?」
彼女は俺の声に反応しなかった。
俺は彼女の肩を揺すって声をかけ続けた。
「ねえ…ミキちゃん?」
やっとのこと俺の声に気付いた彼女は記憶を取り戻した記憶喪失者のように俺を見て小さな声でつぶやいた。
「どうしよう…。」
絶望感丸出しの表情で俺のTシャツの裾をキュッと握った。
「…え?」
この時の俺の顔は、たぶん、マジかよ、って感じになってたと思う。
聞かなくても予測できるレベルだったけれど、俺は彼女に聞き返した。
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