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歳は20くらいに見える。
飲み会帰りの大学生といった感じの派手な服装だ。
なぜか靴をはいていなくて、丸出しの裸足だった。
若干疲れた表情で女はボーッと俺を見ると、突然、嬉しそうに叫んだ。
「ユウくん!!」
あまりに大きな声だったもんで、俺は戸惑って反射的に言葉を返してしまった。
「はぁ?」
女は手を振りながら言う。
「ユウくんだ!ユウくんが戻って来てくれた!」
ユウくん?冗談がキツい。わざわざ、引っ掛かるようなことを持ち出して。
何言ってんだコイツ。
相当酔っ払ってんな。
「誰だよ!俺はユウくんじゃねーぞ!」
俺が叫ぶと、女は足の力が抜けるようにペタンと地面に座った。
しばらく無言でうつ向いて動かなくなった。
そして、スイッチが入ったように気持ち悪そうな目つきで俺をにらんだかと思ったら低い声で唸りだした。
「ウウ…ウ……ウウ。」
威嚇する犬のような声を出して座っている女を前にして、俺は相当引いていた。
うわー、厄介なヤツと出くわしてしまったな。
キチガイじゃねーのかコイツ。
そんなふうにしか思えなくて、俺は顔を引きつっていたと思う。
女は不気味につぶやいた。
「どうして?何で戻ってきたの?」
「…え?」
俺は少し焦った。
俺ではない誰かにきいている言葉なのに、すんなりと答えられない自分がいた。
つい最近まで住んでた…「この町」に戻ってきた理由…。
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