Ni-chan

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まず一つ目の理由として、どうしても答えろと言われたら、「夏休みだったからヒマで」と答えるだろう。 でも、本当はそうじゃない。 そんな簡単な理由じゃない。 どうしても逃げ込む場所が欲しかった。 誰も近寄れない、俺にしか許されない特別な場所が欲しかった。 そんで、パッと頭に浮かんだのがここだった。 みんなが恐れる心霊スポット。 俺にとってはちょっと危ない空気の通学路。 霊感があるのか、自分を試してみたかったっていうのもあるかな。 とにかく、簡単にまとめてしまえば、やけになっただけなんだ。 重くてどす黒いものが体の中に溜まっていって、苦しくなった。 やりたいことを追うことはこんなにも難しいのだろうか? なりたい自分になることはこんなにも難しいものなんだろうか? 大都会の迫力ある建造物に憧れて、東京の大学に行ったはいいものの、町にも、大学にも馴染めず、おまけに遠距離になったせいなのか、高校生の頃から付き合ってた彼女には別れを告げられてしまう始末。 さらに、一緒のバイトで同じ大学のサキちゃんにも、あんなに仲良くなったのに、あっさりフラれてしまった。 飲み会も、合コンも、頑張って楽しんでるつもりなのに、後になると胸の中が空っぽになっていった。 先走る自分に置いていかれる自分を感じたこともあった。 人の流れに流されて今の俺の現在地は不明になって、目的地さえも不明になって…。 人の裏がたまに見えて、俺が知らない間に、俺自身も罠にかけらるんじゃないかって臆病になったりもした。 幽霊よりも人間の方がよっぽど怖い。 笑顔で話すその心情は本人にしかわからない。 考えすぎかな? そんなことない。 いや、考えすぎだ。 「…。」 衝動的な感情が生みだした中途半端な覚悟が、俺の喉の奥深くからはい上がってきて俺という操り人形で暇潰しの遊びをはじめたような現状。 頭の中がザワザワうるさくって、俺は無言で女の綺麗な手のこうを見つめていた。
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