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昔から、可愛かったんだ。
ユウトに直接聞かせてやりたい。
彼女も相当苦しんだんだろうな。
俺も苦しんだ。
できるなら、俺がユウトならよかったのにって思ったこともあった。
でも、残念ながら俺はユウトじゃない。
悔しいけど、この女が言うユウトは俺の兄ちゃんだ。
そんでもって、兄ちゃんは二年前に交通事故で死んだ。
突然、いなくなった。
信じられないけど、死んだんだ。
あの瞬間から時間だけが過ぎた二年間。
俺が変になったのも、あの頃からだ。
俺は彼女にかける言葉を探していた。
「ミキちゃん…。」
そこまで声に出て、その後が続かなかった。
何を言っても、わざとらしくなりそうで、彼女の想いに答えられるだけの価値のある言葉は、俺の口からは出せなかった。
俺が言ったら嘘になる。
彼女は嬉しそうに答えを待っていた。
俺には言えない。
許してくれ。
苦しさに耐えられなくて、俺はしぶしぶ口を開いた。
「ごめん。俺はユウトじゃないんだ…。」
そんなに大きな声でもなかったのに、トンネルの中で重苦しい声が響き渡った。
現実に引き戻すために、俺は彼女の正常な反応を待った。
「それでもいいから…答えて。」
現実には戻りたくない。
そんな感じの表情で、彼女はすがりつくように答えた。
きっと、彼女はわかってるんだ。
最初から、気付いていたのかもしれない。
俺がユウトじゃないことを。
彼女の放った言葉に、俺は奮い立った。
口の中に残るラムネを強く噛み砕いた。
拳を握りしめて、言いかけてやめた言葉を、思わず生き返らせてしまった。
「俺も…ずっとミキちゃんのこと好きだった。」
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