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想いが止まらなくて、突発的に言ってしまった。
弾け飛ぶことを考えずに、引き金を引いてしまった。
衝動にかられただけの、完全なる見切り発車だった。
その後どうなるかなんて、なんにも考えていなかったし、考えたくもなかった。
彼女は俺の目をまっすぐに見つめていた。
兄ちゃんのおかげと言うべきか、兄ちゃんのせいと言うべきか…。
偽りの欠片もない澄みきった笑顔だった。
それに比べて俺は、罪悪感と後ろめたさをそっと感じながら、彼女を見つめていた。
どんな顔をして、俺は彼女を見ていればいいのか、わからなくなった。
きっとその瞬間は、つりあがった悪い顔をしていたに違いない。
ここにはもういない兄ちゃんを使ったんだ俺は。
やっぱりダメだ。
言っちゃいけなかった。
「…ってのは全部ウソ。」と言ってしまおうと、俺が口を開いた時だった。
突然、彼女の表情が変わり、両手で口を押さえてモゾモゾと膝で歩きだした。
「ウウ…。」
苦しそうな声をあげながら、道路のスミにある側溝まで動いていった。
急にどうしたんだ?
口は開いたが何も言わないまま、疑問の表情で、俺はそんな彼女の姿を目で追っていた。
側溝のところまでくると両手を地面について、彼女は顔をうずめた。
「ウエェー。」
聞いたこともない声で、側溝に向かって勢いよく吐き出した。
びちゃびちゃと液体のこぼれ落ちる音が生々しく聞こえた。
あの可愛い顔からは想像もつかない見事な吐きっぷりだった。
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