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「なにそれ?」 年下の少女が言った。 「うそでしょ」 「いいえ、嘘じゃないわよ」 年上の少女が涼しげな顔で言った。 「20世紀のはじめ頃、イギリスに住むある少女が、彼女の従姉妹が妖精と一緒にいる写真を撮ったの」 「へえ」 年下の少女は、興味がなさそうにもう一度机に頬を預けた。 「興味ない?」 「嘘くさい」 あくびを噛み殺しながらそう言った。 「当たり」 「は?」 少女が顔をあげる。 「正解ってこと」 「それは分かるよ。何が当たりなのよ」 「嘘なの」 年上の少女は、年下の少女に顔を近づけて言った。 「少女たちは晩年まで、嘘だと認めなかったけどね。妖精は作り物。紙に描いて切り抜いただけのものだった」 「なによそれ」 年下の少女が呆れたように言った。 「でもね、少女たちは死ぬまで、妖精を写真に取ることはできなかったが、妖精を見たのは本当だと言い続けたのよ」 「へえ」 「写真は確かに偽物よ。でも、彼女たちが妖精を見たことまで嘘であるとは限らないわよね」 「夢見がちね、イチは」 「いいじゃない、夢しか見るものはないわ」 「ちょっと暑いな、ここ」 「川に行きましょう」 「涼しいかもね」 「いいえ、妖精を見つけに行くのよ」
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