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扉に飛び込んだ拓也の視界に入ってきたのは、周りが全て大理石で先が見えない廊下だった。
一人延々と長い廊下を歩いていると、徐々に思考が未来、現在、過去へと深い所まで進んで行く......
「もう日本に帰る事出来ないんなら、皆のお墓参り行きたかったな......」
何の未練もなかったはずの、以前の生活に、少しだけ哀愁を感じ、思わず口にでた。
(そういえば、神や悪魔が実現するってことは、あの世も多分存在するって事だよな......皆が一緒に暮らしているといいな......)
延々と続く廊下を歩く内に、ボーッとして来た拓也は自然と昔の事や家族の事ばかり考えていた。
昔から拓也が感じていた、『何故、俺ばかりがこんな目に遭わなければならない?』という疑問が意外すぎる形で真実が分かり、もちろん納得は出来ないし、今でも理不尽さに怒りを感じてはいるが、少しだけスッキリもしていた。
もちろん、家族を亡くした経験のある人も沢山いるだろうし、拓也とて他人と不幸合戦をする気等、更々ないのだが、前を向けなくなっていた時期は、どうしてもそんな事ばかり考えてしまっていた。
その頃に比べれば、今の拓也の思考はかなりマシである。
(今思えば、ガキの頃から生傷が絶えなかったのも不幸体質のせいだったのかもしれねぇな......)
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