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サクラの手を引いて駆け出したゼロスだが、ものの数十秒ほどで目的地にたどり着いた為手を離した。
サクラは顔を赤くして俯いているままだ。
「サクラ、何か顔赤いけど大丈夫か?
熱でもあるのか?」
「ッ!何でも無いわよっ!」
今日だけでも何回も繰り返されているやり取りである。
若干ゼロスにだけ態度がきつい様にも見える。
少し考えてからゼロスが口を開いた。
「なぁ、ひょっとしてお前......
俺の事嫌いなのか?
嫌なら無理に飯一緒に食わなくても構わないんだぞ?」
「べ......別に嫌いじゃないわよ!
......いきなり......手を繋いだりするから......ちょっとビックリしただけよ......」
言葉の終わりに連れてボリュームが下がっていったが、かろうじてゼロスは聞き取れた。
「そっか!ならいいや!早いとこ家に入ろうぜ」
改めてゼロスの家を見たサクラが驚嘆の言葉を漏らす。
「......あんたって貴族だったのね」
「あれ?言ってなかったっけか?一応、中級貴族って奴だよ。
ま、偉いのは父さんだし、俺には関係ないけどね。
ほれ、入ろうぜ?」
そう言い残し、さっさと中に入っていくゼロスに慌ててサクラも着いていった。
二人が玄関ホールに入ると、居合わせた使用人が話しかけて来た。
「おかえりなさいませ、ゼロス様。
隣の方はご友人ですか?」
「お、お邪魔してます!」
サクラが慌ててお辞儀をした。
「ただいま!そうなんです今日は友人と一緒に昼食を取りたいんだけど、母さんにこの事伝えてもらえますか?
後、一度部屋に戻りますので昼食が出来たら教えて下さい!」
「畏まりました。丁度厨房に向うところでしたので、お伝えしておきます。
では、後ほど御迎えにあがります」
使用人はゼロスの要望を快諾すると、二人に丁寧に一礼して去って行った。
未だ緊張の残るサクラに、ゼロスは声をかけた。
「とりあえず、俺の部屋行こうぜ!」
「分かったわ」
サクラも頷きながら、二人は移動を開始した。
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