優しさのカケラ

2/17
2659人が本棚に入れています
本棚に追加
/129ページ
サクラの手を引いて駆け出したゼロスだが、ものの数十秒ほどで目的地にたどり着いた為手を離した。 サクラは顔を赤くして俯いているままだ。 「サクラ、何か顔赤いけど大丈夫か? 熱でもあるのか?」 「ッ!何でも無いわよっ!」 今日だけでも何回も繰り返されているやり取りである。 若干ゼロスにだけ態度がきつい様にも見える。 少し考えてからゼロスが口を開いた。 「なぁ、ひょっとしてお前...... 俺の事嫌いなのか? 嫌なら無理に飯一緒に食わなくても構わないんだぞ?」 「べ......別に嫌いじゃないわよ! ......いきなり......手を繋いだりするから......ちょっとビックリしただけよ......」 言葉の終わりに連れてボリュームが下がっていったが、かろうじてゼロスは聞き取れた。 「そっか!ならいいや!早いとこ家に入ろうぜ」 改めてゼロスの家を見たサクラが驚嘆の言葉を漏らす。 「......あんたって貴族だったのね」 「あれ?言ってなかったっけか?一応、中級貴族って奴だよ。 ま、偉いのは父さんだし、俺には関係ないけどね。 ほれ、入ろうぜ?」 そう言い残し、さっさと中に入っていくゼロスに慌ててサクラも着いていった。 二人が玄関ホールに入ると、居合わせた使用人が話しかけて来た。 「おかえりなさいませ、ゼロス様。 隣の方はご友人ですか?」 「お、お邪魔してます!」 サクラが慌ててお辞儀をした。 「ただいま!そうなんです今日は友人と一緒に昼食を取りたいんだけど、母さんにこの事伝えてもらえますか? 後、一度部屋に戻りますので昼食が出来たら教えて下さい!」 「畏まりました。丁度厨房に向うところでしたので、お伝えしておきます。 では、後ほど御迎えにあがります」 使用人はゼロスの要望を快諾すると、二人に丁寧に一礼して去って行った。 未だ緊張の残るサクラに、ゼロスは声をかけた。 「とりあえず、俺の部屋行こうぜ!」 「分かったわ」 サクラも頷きながら、二人は移動を開始した。
/129ページ

最初のコメントを投稿しよう!