少年呂布との出会い

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後漢の時代は、宮中の重要な役職は、ほとんど世襲でした……いや……現在の日本でも議員達一部の職種で世襲が根強く生き残っていたのは驚きでしたが…… まぁ、そんな時代だったので、良家に生まれた私には、明るい将来が約束されていたはずが、後漢末期の混乱のため、父は政敵と対立、その争いに敗れたため辺境の地、涼州へと左遷させられてしまったのです。 陳宮「父上?……何故洛陽から引っ越せねばならぬのです?……僕、洛陽には友達が沢山いるし離れたくないなぁ……」 当時十歳の私は、父の苦悩など考える余地もなく、当時の率直な気持ちを父にぶつけてみました。 父「………」 陳宮「ねぇ?……父上?」 母「公台![こうだい……陳宮の字]」 普段は優しい母が声を荒げる 母「父上には、お仕事とか事情があるのよ!……父上だって……もちろん母だって本当は洛陽を離れたく……離れたくないのよ!」 母の両目からは、とめどなく涙が溢れだし、そのような母を初めて見た私も、慌てて泣きながら謝りました……すると父が泣きじゃくる私の頭に手を乗せ優しく撫でながら…… 父「公台……お前は十歳になったんだよな?……まだ一人前の大人として扱うには、ちと早いが……よかろう!……公台にも嫌な思いをさせる訳だから、きちんと話さねばな……公台?……黄巾賊の事は知ってるか?」 陳宮「はい!……もちろん知っています!」 父に「ちと早い」と条件付きながらも大人扱いしてもらえたように感じ、嬉しさの余り声が裏返りながらも元気よく返事をしました…… 父「うむ……その黄巾賊だが最近目に余る悪行が増え、このままでは漢王朝の屋台骨を揺るがしかねないと思い、帝に黄巾賊討伐を進言したのだ……」 陳宮「えっ?……黄巾賊って、地方のちっぽけな宗教団体が暴徒化しただけですよね?……いくらなんでも漢王朝の屋台骨を揺るがすなんて大袈裟じゃないですか?」 父「大袈裟じゃない!!」 父が怒声を発し、余りの迫力に驚き、涙目になった私を父が気付いて…… 父「いや済まぬ……公台に当たっても仕方のない事……洛陽の住人なら皆、公台のように考えておるはずじゃな?」
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