初陣

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「理由?……それは呂布!アナタです!」 「答えになっとらん!……禅問答じゃないんだから、もっと判り易く答えろ!」 呂布が、このまま怒り続けていたら、ホントに戦いの前に体力を無駄に消耗しそうだったので、判り易く答えることにします…… 「今回、諜報部員達がもたらした情報を分析し、敵軍の内容が掴めました……もちろん、情報も分析もまだまだ不足しているけど、おおよその状況を把握したつもりです……その結果、やはり今の黄巾賊は烏合の衆です……この後対決する部隊も、我々の二十倍、六千の兵力があるものと見込まれますが、大半は先の李粛軍のように降伏した兵だったり……生きるため、食べるため、金のため、女性を抱きたいがため……だったりと、仕方なく黄巾賊に身を落としてる兵ばかりです!……これでは、ただの山賊と変わりませぬ!」 「しかし、それでも二十倍だぞ!二十倍!」 呂布は、若干冷静になっています…… 「黄巾賊が急激に勢力を拡大した理由が解りますか?」 「なんだ?薮から棒に?」 「それは漢王朝への不満……つまり、庶民が食うに食われぬ生活を続け、それでも重税が課せられ、一部の特権階級の者だけが甘い汁を吸い、その不満を太平道教祖張角が利用し、張角のカリスマ性で強力な軍隊を築き上げました……しかし、現在の黄巾賊は巨大になりすぎました……もはや張角のカリスマ性だけで率いれぬほどに……それでも黄巾賊が拡大し続けていられるのは、黄巾賊にいれば、食欲や性欲が満たされるため……そんな山賊のような連中の前に、鬼神のような呂布や、鬼のような張遼が現れてご覧なさい……なにより生きる事が大好きな連中は、算を乱して逃げ出しますよ♪」 「………」 「納得してくれました?」 「……納得出来なくても仕方ないだろう……もう後戻りも出来ないしな……今回も陳宮の直感を信じよう♪」 「今回は命懸けの戦い……直感だけじゃなく、諜報部員からもたらされた情報の裏打ちもありますよ♪……敵が陣を構えてる場所は両側を険しい山に囲まれ、大軍に囲まれる心配もなく、伏兵の心配もないとか……李粛軍との勝利に酔い痴れて、今頃は見張りの一部を除く大半の兵が爆睡中とか……でもやっぱり最終決断は直感でしたけどね♪」 辺りは、夜の闇から徐々に白み始め、激闘の匂いが漂って参りました。
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