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「張遼ぉ~っ!」
「張遼殿っ!」
呂布と私は張遼に異変が起きた事を察し、同時に叫びました……
………
「呂布様……軍師殿……大事ありませぬ!馬が射られて転んだだけです……」
張遼は立ち上がり、呂布や私に心配かけまいと叫びました……しかし、後陣からの矢の嵐は今も降り続けています……張遼は槍を風車のように振り回し、降り注ぐ矢を防いではいましたが……
「呂布様……張遼殿が危険です!ここなら敵の矢の射程圏外ですから、ここまで退かせましょう!」
「うむ!……張遼っ!皆の者!退けぇいっ!……ここまで退くのだ!」
呂布の大音声が戦場に響き渡りました……張遼は騎馬兵を指揮し、矢を防ぎつつ退却を始めますが、敵の敗走兵は後陣の閉ざされた門に殺到します……が……後陣からの矢の雨は、激しさを増しながら、情け容赦なく降り続きます……
「なんと……味方の兵まで……」
私は、呆気に取られて呟きました……
「皆の者っ!何をしておる!……むざむざ矢の標的となり、犬死する必要ないだろう!……戻れ!戻って来い!……安心しろ!無抵抗の者は殺さん!」
「……りょ呂布…様……」
呂布は、仲間の矢にかかり犬死するはずの敗走兵を呼び戻したのです……敵を同士討ちさせて、敵勢力の力を削ごうと考えていたのが、この陳宮の策……しかし呂布は、逃げ切れなかった敗走兵を味方に取り込む考えをしていたのです……いや、呂布は純粋に犬死する敗走兵を助けたかっただけかも知れません……
「このまま退却しようにも後陣の仲間に阻まれて、それも叶わない……張遼は信義を重んじ、嘘、偽りのない漢[おとこ]と聞いている……その張遼が主[あるじ]と仰ぐ呂布の言葉なら嘘じゃなかろう……俺は呂布に降るぞ!」
一人の敗走兵が叫び、戻って来ました……それを見た他の敗走兵達も先を争うように戻って来たのです……
「皆の者っ!……皆を見捨てた仲間達を見返したくないか?」
「「「「「応ぉ~っ!」」」」」
呂布の叫びに敗走兵達は応えます……
「だったら戦え!……俺は仲間を見捨てる奴を見ると虫酸が走る[むしずがはしる]んだ!……俺が奴等を討ち滅ぼしてやりたいが兵力が足りん!……お前達の協力が必要だ!」
「「「「「応ぉ~っ!」」」」」
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