初陣

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私の『みんなと一緒に前線で戦いたい!』って、わがままを、呂布と張遼は優しくさとしてくれました…… 張遼は投降兵達に支度をさせ、呂布は後方部隊の荷駄隊から弓を取り寄せました……この弓も呂布愛用の戟同様、馬権殿から提供された弓で『十人引きの剛弓[ごうきゅう]』と呼ばれる特別な弓でした…… 「今までの俺は弓術が嫌いだった……『力いっぱい引き絞れ!』と教えられ、力いっぱい引き絞ると弓が折れてしまい怒られてたからな……だが、この弓は違う!俺の全力を受け止めてくれる♪」 敵陣までの距離は百メートル……当時の弓の射程距離は三十メートル程度……普通に考えれば、まともに届く距離じゃありませんが、呂布はその場で剛弓を引き絞りました…… 『ヒィュンッ!』 … 「ぐぁっ!」 「た、隊長っ!」 「「「隊長!」」」 百メートル先の敵陣が騒めき立ちます…… 「ま、まさか……あんなに離れた敵陣の隊長を射止めちゃったの?」 「……ふっ♪……」 まだ隣にいる呂布へ問い掛けると、返事の代わりに『ニヤッ♪』と、笑顔を向けました……しかし直ぐに、いつもの『キリリッ!』とした表情に戻り、物凄い勢いで敵陣に矢を射かけ続けます……その勢いたるや一分間に三十発……二秒に一発の勢いです……しかもその一矢一矢が百メートルも離れた敵兵の眉間を捉えてます…… 呂布が矢を射かけ始めた頃は、敵陣からも反撃があり、数多の矢が降り注ぎましたが、当然のように我々の所へは敵の矢が届く事はありませんでした…… 「ば、化け物だ!……こんな距離から正確に矢を射かけるなんて……次は俺達が射られっちまう!」 敵陣は敗走兵が増え始めます…… 「返せ!戻せ!逃げるな!……逃げたら斬るぞぐぁっ! 逃げる兵を押し戻そうと叫んでいた敵方の小隊長の口に、呂布が放った矢が突き刺さりました…… 「に、逃げろっ!化け物が相手では勝てっこない!」 敵は大半の兵が逃げ出します……しかし今は、その兵を留める隊長達は呂布に射殺されていて、完全に統率を失っています…… その状況を見た呂布は、ヒラリと馬に乗り後方の歩兵隊へ指示します…… 「俺に追い付こうなど考えず、盾隊三十人が横一列に並び、ゆっくり来い!」 呂布は単騎敵陣へ向かいました……
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