ぜろ

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さて、どうしよう。体育館に移動する時間まであと30分以上ある。おまけに、体育館の場所なんてわからない。誰かと話すしかないのか……でも、こんな知らない人達の中の誰と? 転校生は見世物。そんな言葉を聞いたことがあるけど、それは本当なんだと思うよ。担任が去り、生徒に自由が戻った瞬間。彼らは一斉に群れを成し、透明な檻の中に居る僕を遠巻きに眺めていた。 孤独だ。 そんな中で、唯一隣に座っていた男子が声をかけてくれた。 「飯田だっけ。隣よろしく。俺は長谷川」 「え、あ、うん。長谷川君……よろしく」 「君付けしなくていいよ。長谷川って呼んで。俺も飯田って呼ぶから」 「じゃあ、長谷川」 この時、長谷川が嬉しそうにニカッとした笑顔を、僕は一生忘れないと思う。
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