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答案用紙が返された放課後、テストの結果を知った蓮井は身支度を済ませ帰ろうとしていた俺に話し掛けてくる。
「おめでとうございます、とりあえずは留年を免れましたね」
「あぁ、そうだな。サンキュー」
俺は素直に感謝の意を述べると蓮井はとても嬉しそうに笑みを返してきた。
「それじゃあ、私から問題です」
「なんで、『それじゃあ』なんだよ」
蓮井は教師に俺の面倒を任されたから引き受けた訳で、別に俺から頼んだ訳じゃないのだからその要求を飲まずにとっととその場を離れても良かったのだが、何故か俺はその疑問を口にするだけで動こうとはしなかった。
まぁ、世話になったし問題を聞くだけでも聞いておいて損はしないだろう。
「それじゃあ、始めますよ?」
俺が聞こうとする意思を察したのか蓮井はそのあと続けて話しを始めた。
「クリスマスの夜サンタクロースは少年にサッカーボールと自転車をプレゼントしましたが、少年は喜びませんでした。どうしてでしょう?」
「唐突だな、なぞなぞの類か?」
少し考えた後、「そんな物は少年だって既に持っていたからじゃないのか?自分が欲しいプレゼントじゃなかったのさ」と適当に答える。
「それが貴方の答えですか?」
「違うのか?」
質問の意味が分からない。正解ではないのならそんな聞き方は普通しないだろうからだ。
「実はこの問題、答えは何通りもあるんですよ」
「そうなのか。何通りもあるって事は、少なくても3パターン以上なんだよな?」
「そうですね、パターンと言うよりルートですけど」
そんな蓮井の言い回しに少し違和感がある。
「貴方の通って来た道は決して不幸じゃなかったんですね」
「何、当たり前な事言ってんだよ。後悔する様なことなんて一つもしてねぇよ」
俺はわざと口調を崩すと蓮井はクスクス笑いながら、似合わないですよと応えた。
ところで、あの問題で蓮井は俺に何を試させたのだろうか。
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