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俺がいつもの様に、コンビニで立ち読みしていた時の話。
右肩をトントンと、軽く叩かれた。
誰だ?と思い、折角封を破いた雑誌から、目を離して叩かれた方へ振り向く。
しかし誰もそこにはいなかった。
周囲を見回すが店内には俺と店員以外の気配は感じられない。
不思議に思ったが、読みはじめた雑誌の方が気になったので、ふたたび読みはじめる。
雑誌に集中していると今度は左肩を軽く叩かれた。
イラッときた俺は、「誰だよ」そう少し荒げた口調で勢いよく振り向く。
「こんにちは」
黒髪のワンレンが喋った。
いや、正確には俺のすぐ隣にいたその少女が、である。
名前は蓮井と言い、最近この市内に引っ越してきたクラスメイトだ。
「またお前か」
げんなりとした態度でそう言うと蓮井は少し淋しそうな感じで「もしかしてお邪魔しちゃいました?」と尋ねて来る。
別にそんなことねーよと読んでた雑誌を放り出し、缶コーヒーを一つ買ってコンビニを出たら蓮井も何故だか俺に付いて来た。
「なんか用か?」と言うと「一緒にお茶しませんか?」と誘われた。はぁ?なんでお前と。
その後もストーカーの如く後を付いて来るので、妥協の末、仕方がなく繁華街から程無く近い公園のベンチに、二人で座ることになった。
「ったく、大概しつこいよなお前」
さきほど買った缶コーヒーを飲みながらぼやく。
「そうですか?」
それに対し蓮井は小さな手提げバックから水筒を取出し、蓋にあたるカップに茶色い液体を注ぎながら聞いてきた。
「だってそうだろ?さっきも店の中でふざけやがって」
「え?」
「とぼけるなよ、俺の背後から息を潜めて悪戯してたろ」
俺は真面目に言ったつもりだったのだが、それを聞いた蓮井はまるでなんの事か解らない様だ。
「そんな事してませんよ、だってコンビニの前を通っていたら貴方が居るのを見かけたので、店内に入ってからすぐに声を掛けたんですから」
それでは俺は誰に肩を叩かれたのだろうか。
蓮井にその出来事を話すと、予想外にも答えが返ってきた。
「あのコンビニには霊道があるので、その為かもしれませんね」
そんな屈託ない笑顔で言われても、凍り付いた俺の背筋はちっとも和まなかった。
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