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頭の中が、真っ白になった。
真君が居なくなる?
物心ついた時から一緒だった真君が居なくなる?
今まで優しく見守ってくれた真君が、居なくなる?
そんな事、考えられなかった。
「本当はもっと早くに言うべきだった。ごめん」
頭を下げる真君。
「……いつ、出発なの?」
他に訊くべき事があったかもしれない。
でも、他の事は考えられなかった。
真君は頭を下げたまま、小さな声で言った。
「明日なんだ。だから今日、遊びに誘ったんだよ……」
明日。
明日になれば楽しい生活は終わってしまう。
明後日からは、真君の居ない生活が始まる。
その生活が一体どんなものになるのか、見当もつかない。
違う。
見当がつかないんじゃない。
考えるのが嫌なんだ。
「……なんで」
声が、震えていた。
「なんで、もっと早く言ってくれなかったの……?」
「……ごめん」
真君は下を向いたまま、謝るばかり。
「ごめんじゃないわよっ!!」
感情を抑えられなかった。
「なんでそんな大事な話、もっと早くにしてくれなかったのよ!?私にだって心の準備があるんだよ?突然そんな事言われて、はいそうですかって納得出来るわけ無いじゃないっ!勝手な事言わないでっ!!」
違う。
勝手な事を言っているのは私の方だ。真君は悪くない。
だけど今は、悲しさと寂しさと怒りが混ざった訳の分からない感情を、真君にぶつけるしかなかった。
「……ごめん」
真君は、ただただ謝っていた。
「馬鹿っ!!」
そう叫んで、私は駆け出した。
真君の制止も聞かずに。
とにかく一人になりたかった。
泣いている顔を、
見られたくなかった……。
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