第一節

3/7
769人が本棚に入れています
本棚に追加
/22ページ
               「そこに居るのは彩音かい?」                私を呼ぶ声がする。 後ろを向くと、真(まこと)君が立っていた。 「あぁ、やっぱりそうか。どうしたんだ?こんな時間に」 真君は、私の隣に座りながら訊きいてきた。 「別に……。真君こそどうしたの?」 「俺か?俺は夜の散歩だよ」 「そう……」 「何か元気ないなぁ。何かあったのか?」 落ち込んでいる気持ちが、声に出てしまったのかもしれない。 「何でもないわよ」 話したくない。 今は一人になりたかった。 「ふーん。ま、時期が時期だ。テストの結果で親御さんに怒られたんだろ?」 「……」 真君は、妙な所で鋭い。 「ははぁ、図星だな」 「うるさい」 得意気にならないでよ。 人の気も知らないで。 「やれやれ、相当頭に来てるなこりゃ。仕方ない。ちょっと待ってろ」 そう言って、真君は立ち上がった。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!