第一節

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……真君はいいよなぁ。 真君が去った後、私はふと考える。                家が隣同士だった事もあり、小さい頃から一緒だった私たち。でも、真君はいつも私の先を行っていた。 勉強も運動も出来る真君と違い、私はどちらも中途半端。 高校も、真君は県内屈指の進学校で、私はそこそこの普通校。 でも真君はそんな事全く鼻に掛かけない。 私はそんな真君の姿が羨ましくもあり、嫉ましくもあった。 神様は、なんて不公平なんだろう。                               「おまたせ」 真君が帰ってきた。 「どこに行ってたの?」 「ん?ちょっと俺を家まで、こいつを取りにね」 座りつつ、手に持っている物を見せてくれた。 それは、銀色で細長い、少し古ぼけた感じの物体。 「……ハーモニカ?」 「そう、ハーモニカ。小さい頃よく吹いてただろ?」 確かに真君が昔吹いていた気がする。 ……下手っぴで聴けたものじゃなかった気もするけど。 「この前見つけて懐かしくなってさ。ちょっと聴いてみてよ」 そう言って、ハーモニカを吹き始めた。
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