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……真君はいいよなぁ。
真君が去った後、私はふと考える。
家が隣同士だった事もあり、小さい頃から一緒だった私たち。でも、真君はいつも私の先を行っていた。
勉強も運動も出来る真君と違い、私はどちらも中途半端。
高校も、真君は県内屈指の進学校で、私はそこそこの普通校。
でも真君はそんな事全く鼻に掛かけない。
私はそんな真君の姿が羨ましくもあり、嫉ましくもあった。
神様は、なんて不公平なんだろう。
「おまたせ」
真君が帰ってきた。
「どこに行ってたの?」
「ん?ちょっと俺を家まで、こいつを取りにね」
座りつつ、手に持っている物を見せてくれた。
それは、銀色で細長い、少し古ぼけた感じの物体。
「……ハーモニカ?」
「そう、ハーモニカ。小さい頃よく吹いてただろ?」
確かに真君が昔吹いていた気がする。
……下手っぴで聴けたものじゃなかった気もするけど。
「この前見つけて懐かしくなってさ。ちょっと聴いてみてよ」
そう言って、ハーモニカを吹き始めた。
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