第一節

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               「どうだった?」                演奏が終わったみたい。 得意気なのがむかついたから、 「ヘタクソ」 と言ってやった。 「うるせぇやい」 真君は、はにかんだように笑って、 「良かった。元気なったみたいだな」 と言った。 ……やっぱり優しいな。 真君なら、私の疑問に答えてくれるかも知れない。 「……ねぇ、真君」 「ん?なに?」                「どんなに頑張っても誰も振り向いてくれない時、私はどうすればいいんだろう?」                「……簡単な事さ」 真君は月光で輝く波間を見ながら、言った。                「そんな時はな、追い越してやればいい」                不思議な答えだった。 「追い越す?」 「そうだ」 真君は頷いた。 「どんなに頑張っても、誰も見てくれないんだろ? だったら、もっともっと頑張って、そいつらを追い越してやるんだ。そうすれば振り向かせる必要なんて無くなる。 だってそいつらの目には、お前の背中が映っているんだから」
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