第二話 ごみ出しは忘れずに

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そいつは半額で売っていたシューズに前足を乗せて、うるうるとした目で迅騎を見上げていた。 「いた…」 アライグマだ。正確にはシン、腹を空かせて、迅騎と思ったが同じ考えでパン屋に来たのだろう。 迅騎は先に進んでいった美佐子を呼び寄せた。まさかこれほど早く見つかるとは思っていなかった。 美佐子は見つかって良かったとほっとしていた。迅騎はアライグマの首を掴むとごみ捨て場のポリバケツに閉じ込めた。 「あれ、アライグマは?」 「中だ」 ポリバケツの蓋を、ドンドンと叩くと中から動物の鳴き声がした。美佐子は迅騎を突き飛ばすとポリバケツからシンを救いだした。 「なにしてるんですか」 思いきり尻を地面にぶつけ、「イテテ」と顔を歪めながら立ち上がると美佐子に怒鳴り付けた。尻を擦り、アライグマの頭を鷲掴みにし、持ち上げた。 「ちょっと、なにするんですか…」 このクソヤロウと言いたかったがなんとか堪えた。 「なんか入れもん持ってこい」 アライグマを脇に抱え、美佐子に罵声を飛ばすような口調で言った。
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