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柁間迅騎の合図にアパートの一階で迅騎を待っていた木下美佐子(きのしたみさこ)が二階を見上げた。
すると、男が頭上を目掛け落ちてきた。わけも分からず、恐怖と危険を察知し、「キャッ!」と情けない声を出してしゃがみ込んだ。
男は美佐子の後ろに着地すると片足を引き摺りながら逃げるように歩き出した。
「なにしてやがる!」
迅騎が美佐子の頭に怒鳴り付けると美佐子は涙目で迅騎を見上げた。
「ごめんなさい」
行きなり言われて止めれるはずないだろ! と、口に出したいがなんとか堪えた。迅騎は「ちッ」と舌打ちをすると柵を蹴り、高く飛び上がった。
美佐子は唖然と口を開けながら迅騎を見た。空に昇る満月に迅騎の黒いシルエットが重なり、まるでバットマンの様なスーパーヒーローに見えた。
そのまま、急速落下で逃げようとした男の背中にのし掛かった。
「おら、観念しろよ!」
「僕がなにをした!」
「高橋ラーメンの食い逃げ容疑で逮捕する!」
と、迅騎は彼の耳元で叫んだ。十分聞こえるのに叫ぶ必要があるのかと美佐子は「うるせぇ」と呟いたが迅騎は聞こえなかった。
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