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この依頼が舞い込んだのは今日の朝だった。
木下美佐子はいつもの様に電車から降りて改札を通るり、歩くこと三十秒。
駅のすぐ近くの三階建ての建物。一階では高橋ラーメンが準備中の看板を置いていた。
美佐子は鉄製の螺旋階段を駆け上がり、柁間探偵事務所と書かれた張り紙が張られた二階の扉をゆっくりと中の様子を伺うように押した。
ガシャッと開けた扉に何かが当たり、砕け散った。
「おせえぞ」
奥の机から低い男の声が聞こえた。美佐子は飛び散って背中まで伸びた髪についた酒を手で拭いとると静かに部屋に入った。
「すみません」
美佐子は割れた瓶の破片を避けながら奥の机に近づいた。
空き瓶や空き缶が乗せられた机に足を上げて、ヤクザの頭の様な男がこちらを睨んでいる。
「またお酒呑んだんですか」
汚れた部屋を不愉快な顔で見渡した。これでも綺麗になったものだ。
初めて木下美佐子がこの探偵事務所訪れた時はゴキブリが町を造り、アリが巣を造り、ネズミが祭を開いていた有り様だったが美佐子の綺麗好きな性格によりかたずけられた。
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