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美佐子が掃除をし始めてかなりの時間が経った。
窓から見える駅前広場の時計台は昼過ぎを指していた。
美佐子はふぅと一息をつくと椅子に腰掛けた。
「お前が来てから事務所は綺麗になったが依頼は来なくなっちまったよ」
と、迅騎はゲラゲラ笑いながら美佐子の足元に吸い殻を投げ捨てた。少しイラッと来たが堪え、吸い殻を拾い、ゴミ箱にしてたのと同時に窓の外から「食い逃げだ!」と、男の声がした。
迅騎は椅子を回し、後ろの窓から外を覗くと一階のラーメン店から男が逃げるのが見えた。
迅騎は指を鳴らし、事務所の扉から外に飛び出した。美佐子はバタバタと足音を立て、迅騎に着いていった。
下に降りると高橋ラーメンの店主、高橋大器(たかはしたいき)が中華包丁を片手に店の前に立ち尽くしていた。一見、迅騎に負けず劣らずなゴツい顔のヤクザが獲物を狙うかの様に包丁を握り締めていたかの様に美佐子の足が止まった。
「おっさん。どうした?」
迅騎は驚く素振りも見せず、高橋のおっさんに話しかけた。どうやらさっきの男の声は彼の物らしい、美佐子は迅騎に隠れるように高橋大器を見た。
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