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でも、そうだった。
始まりは私が駿君に仕掛けたんだから、付け入られた訳じゃなく、私がそう仕向けたようなものだ。
「美佳子さん?」
先程までは浩太君が座っていた場所に駿君がいて。
駿君がテーブル越しに手を伸ばした。
私の手を取りぎゅっと握り締める。
「美佳子さんは何も悪くないよ。」
ちょっと意地悪しすぎたよね、ゴメンね。
駿君は私の手の甲を撫でながら言った。
「ううん、ごめんなさい。」
具体的に何に謝ったのか自分にも分からなかったが、駿君も何も言わなかった。
お待たせしました、と店員がアイスコーヒーを持ってきても駿君は私の手の甲を撫でていて、少し恥ずかしくて視線を壁に向けた。
「映画までまだ時間があるね。どこか行きたい所ある?」
駿君が穏やかに笑って、私もやっと緊張が緩む。
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