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私は嫌な予感に、震える足を無理矢理地面から引き剥がして、ヨロヨロと駿君に近付く。
「美佳子さん…」
男は既に大通りに走り去って、マミさんは小道を飛び出し電話に向かって怒鳴っている。
ゆっくり駿君の体を抱き起こすと、駿君が低いうめき声を上げた。
腰に回した手にぬめっとした感触を感じて、視線を向けると真っ赤な鮮血が流れ出て水溜まりを作っていた。
「駿君!」
彼の腹と腰の間辺りにナイフが突き刺さっているのが見えた。
「駿君!駿君!」
私が狂ったように叫ぶも、駿君は弱々しい笑顔を向けて大丈夫、と言うように口を動かすしか出来ない。
私の呼び掛けに必死で応えようとしていた駿君の目はだんだん虚ろになっていき、静かに目を閉じた…
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