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「美佳子さん、泣かせちゃったね。」
おいで、と手を伸ばした駿君は少し顔を歪めた。
刺された場所に障るのだろう。
慌てて枕元に近付き、そのまま床に膝を立てて駿君の頬を撫でてみる。
温かくて、柔らかい肌。
少しくすぐったそうに目を閉じて口元を緩ませる駿君の頬を雫が流れた。
「美佳子さん?」
駿君が目を開いて私に優しく笑い掛ける。
私の目から溢れ出した涙が駿君の頬にポタポタ落ちて、頬を滑り落ちる。
「駿君…」
「なあに、美佳子さん。」
「駿君…」
しゃくり上げてまともに話せない私の手を軽く握って駿君が微かに笑う。
彼の手はいつもより血の気がなくて、指先も冷たい。
それでも、滑らかに動いて私の頬をするりと捉える。
駿君は生きている。
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