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「私は直接話したことはないけど、英語の授業で立ち会った時、流暢な英語を話してたよ。」 さすがだね、と笑う。 テニスコートでは基礎の練習から試合形式に切り替わり、桜木君がコートに立つ。 黒髪がさらさらと流れ、引き締まって浅黒い筋肉がボールを追い、打ち返す。 冬休み明けで、まだまだ極寒の中、寒さを物ともせず走り回る姿には敬服する。 優雅で、無駄のない動き。 鋭く打ち返す力強さ。 私は時間を忘れて見つめた。 「そろそろ終わりそうだね。」 隣で携帯電話をいじっていた陽子が顔を上げる。 「どうするの?」 私にニヤニヤと笑い掛ける。 「約束だから、会いに行ってくる。」 私が言葉少なく返すと、了解頑張ってねと返ってきて肩を叩かれた。
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