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ハッと顔を上げる桜木君に慌てて言い繕う。
「彼女は途中で帰ったから私一人だよ。」
「そうなんですね。」
そう言う桜木君の声は安堵の色があった。
「今から帰るの?」
「はい。鍵を返してから。」
「自転車?」
「はい。」
「じゃあ、途中まで一緒に。」
私の言葉が想像を超えるものだったのか、桜木君が驚いた顔で私を見た。
「あ、別に…」
「はい。」
私が慌てて取り消そうとする前に彼はハッキリと頷くと、鍵を返して来ますと走り出した。
取り残された私。
何故か、桜木君に話し掛けると生徒と話しているのにやり取りに気を遣う。
まるで不器用な駆け引きしているよう。
「参ったなぁ。」
私は思わず呟いた。
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