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……… 「何だか青春のヒトコマだね。」 藍子が受話器越しに面白がって、それでそれで?とせっつく。 「別に。一緒に歩いて帰って、途中の自販機でお茶飲んだ。」 「ひょー、初々しい!」 「いや、普通だし。」 極めて冷静な声で返すも、更にからかわれる。 「もし、中学時代に会っていたら切ない片思いだよね。」 「若い頃だったらね。」 私が苦々しく返事をしても藍子は笑うばかりだ。 「高校の時でも、だね。」 私達は高校で出会った。 あの頃の私達は幼かった。 二人とも恋はすれどもお付き合いなぞした事もなく、行き帰りに自転車の二人乗りのカップルを横目に部活に勤しんでいた。 確かに、高校で出会っていても… 「写メないの?」 「ある訳ないし。」
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